目次
シナリオ概要
仕事帰りに探索者たちは急に意識を失ってしまう。目がさめるとそこは見知らぬ部屋だった…。
よくある(?)Closed型シナリオです。
【推奨技能】
特になし。探索と推理をしっかりとする気持ちを持ってきてください。
◯振る機会があるかも
目星・図書館・聞き耳・何らかの知識技能、何らかの操作系技能。
算数が必須になります。四則演算が出来ないと詰みます。
※テストプレイした時、「自分は頭が溶けているので電卓使用をしても算数できません!」という方がいらっしゃり、危うく全員ロストするところでした。
そのため、面倒事を起こしたくないKPは事前に「PLは四則演算はできるか?出来ない場合はロストの可能性が非常に高いが大丈夫か?」という内容を念押ししておくことを推奨します。
戦闘に入った場合は探索者達が致命的なミスをおかしている時だけです。
リアルコンピューター知識があると秒殺で終わる可能性有り。
ロストの可能性大いにあり。
【人数】
1人~3人程度。3人推奨。
【時間】
テキセ:3時間~5時間
ボイセ:1時間半〜2時間
【こんな人におすすめ】
- さくっと短時間で回せるシナリオを探している
- 戦闘よりも探索・推理したい
- 発狂したい
- 授業で2進数とか16進数とかならったけど使い所ねーよ!って思ってる人
【注意事項】
- 神話生物の独自解釈・オリジナルの魔術がでてきます。
- 改変などは自由に行って楽しく回していただいて大丈夫ですが、自作発言・再配布などはお控えください。
- 画像は直リンクせず、手元にダウンロードしてからお使いください。
- とある歌詞の一説を元にしたシナリオです。
- リプレイや動画、生放送などで使用する場合は下記3点について記載いただければ自由にやっていただいて構いません。使用報告などはいりません。
- 作者:秋りんご
- タイトル:どうして誰も気づかないんだろう
- 掲載場所:https://www.fallapple.net/?p=1284
- 自作と偽ることや、本シナリオを商用として販売することなどは強くお断りします。
- 製作者は既にクトゥルフから離れており、今後のルールブック改定などで本シナリオが不正確な記載を含む場合があります。
- このような場合において、記載が不正確であったことにより生じたいかなる損害、及び本シナリオを使用することにおいて発生したトラブルに関しても、筆者は責任を負いかねます。
導入
探索者は仕事/学校帰りです。帰り道の途中で急に立っていられない程のめまいと頭痛に襲われ、そのままその場に倒れ込みます。
□最初の部屋
探索者が目をさますと、そこは見知らぬ真っ白な部屋だった。
自分はどうやらソファーの上で横になって寝かされていたようだ。部屋の中心には大きな机と、それを取り囲むように3脚の大きなソファー。
机には花柄の可愛いテーブルクロスがかけられ、その上には今からお茶会でも始まるのだろうか、紅茶の入ったティーポットとお菓子、サンドイッチなどの軽食が。
そしてお茶会には似つかわしくないノートパソコン、そして少し古いガラケーが置いてあった。
部屋の出入り口は1つの白いドアのみ。
地図
※持ち物について:「幸運」を振って成功なら帰宅途中に持っていたものは持っています。
※失敗だと、何も持っていないか、ポケットに入れておいたスマホくらいしか持ってません。
※難易度を下げたい場合は、成功でも武器になりそうなものを回収してしまってもよいでしょう。(水槽を割るとロストなので、割れないようにする)
◯パソコンを開く
ノートパソコンを開くと、ユーザ名「kyosuke.takahashi」パスワードを求められています。
(3回以上間違えると「パスワードのヒント:いつもの」と出て来る。)
パソコンには付箋が張っており、「解除コードの番号→0 10110-0x9CF-4514#」と書かれています。
※この解除コードを時間内にとけないとロスト(エンディング1処理)です。テキセ→5時間/ボイセ→1時間半~2時間を目安に設定してください。
◯携帯を見る
携帯は少し古い機種のガラケーのようです。1~9と#と*が入力可能です。
過去の電話番号の履歴やメール履歴などは特になし
◯机の下
プロジェクターが置いてある、3脚のソファーが置いてない(壁しか無い方)を向いて設置されている。
◯アフタヌーンティーセットについて
医学、もしくは薬学を振ると「毒などは入っていない」ことが分かる。
紅茶:SAN値が1d3回復
ふわりと香る高級な茶葉の香り、美味しい!張り詰めていた緊張感から開放された気がしました。1d3のSAN値が回復します。
軽食:SAN値が1d3回復
サンドイッチ、スコーン、クッキーどれもとても美味しい。紅茶によく合う味だ。ぺろりと平らげてしまった。
※ショゴスと死体をみてSANがガッツリ減るので救済アイテム。一時的狂気、もしくは不定中にこれらを飲食すると「精神分析」と同じ効果がある。
※高橋京介は紅茶に造詣が深かった。(後述)なので、大好きな紅茶やお茶菓子に毒をしかけるようなことはしない。
◯白いドア
ドアに対して聞き耳をすると、「テ………・リ」という小さな何かの鳴き声が聞こえた気がした。鉄錆のような臭いがする。
□隣の部屋
ドアを開けると、鉄さびの臭いがつんと鼻を付く。真っ先に目についたのは1人の倒れ込んだ人物が真っ先に目に入る。男の腹は潰れており、床に敷かれているカーペットは男の血で赤く染まっていた。見ただけで明らかに致死量であり、この男は既に死んでいる、と分かる。SANチェック1/1d3
倒れ込んでいる男の向こう側には大きな円柱形の水槽が2つあり、1つは割れている。
割れていないもう一つの水槽には玉虫色の何かが天井までの大きさの水槽いっぱいに入っておりウゴウゴとうごめいているのを貴方はみるだろう。
無数の気泡で出来たようなその異形の生物はぐちゃり、ぐちゃり、と水槽の中いっぱいに広がり、分裂し、結合し、を繰り返している。
探索者達が入ってくると、無数の目玉が一斉に水槽の中から探索者たちを見る。
微かに「テケリ・リ」と「それ」が一斉に鳴き出しその声が部屋中にこだまする。
見たこともない奇妙な生物に恐怖を覚えSANチェック(1d6/1d20)
部屋の隅には机があり、書類が乱雑に置かれている。引き出しが空いており、いかにも怪しい。机の反対側には本棚がある。
◯男の死体を捜索する
腹が潰れている。カーペットに血がにじみ、既に暗い色へと変化を遂げていることから殺されてから時間が経過しているようだ。首だけは仰向け、身体はうつ伏せになっている。首を180度何者かによって捻じ曲げられたらしい。明らかに人間には出来ないその殺され方に恐怖を感じ、SANチェック0/1
医学情報:死後硬直が始まっていることから、死後2~3時間は経過しているようだ。男の腹は「何か大きな力で無理やりねじ切ろうとされた」ようにみえ、「明らかに人間業ではない」ことがわかる。それとは別に足の小指が折れている。本棚の角に少し血が付いている。白衣の胴体付近に玉虫色の液体が付着している。
目星、もしくは身体を見るRPで開示:手の甲に「Takahashi1225」と書かれている。
◯本棚
図書館ロールで「基本情報処理技術者試験」の本がものすごく読み込まれていること、1枚だけ付箋がはってあること。がわかります。
そのページには「2進数」と「16進数」の説明についてが記載されています。
n進数
その数字がnになったら繰り上がりする数値のこと。
一般的には10進数が使用されているが、コンピュータの世界では主に「2進数」と「16進数」が使用される。
2進数は0、1のみで表現され、「2」を表現する場合は「10」と繰り上がって表現される。つまり2進数の「10」とは、10進数の「2」を意味する。
16進数は1,2,3,4,5,6,7,8,9,A,B,C,D,E,Fで表現される。16を表現する場合は「10」と繰り上がる。16進数での「10」=10進数での「16」である。
また、通常16進数を表現するときは数値の手前に「0x」が付く。「0x1AF」や「0x100」と表記されていたら16進数である。
図書館に失敗した場合、高橋京介について取り上げられている雑誌が出て来る。(もしくはこの情報は高橋の顔を見たあとのアイディアで開示しても良い)
・生物学と情報工学について非常に広い知見をもっている最近とてもメディアに露出している大学教授であること
・何故か雑誌のミニコラムでお菓子と紅茶についての寄稿をしており、メディアでのあだ名は「紅茶王子」
・誕生日は12月25日
・最近のひそかな楽しみは?という質問に対し「ちょっと変わった生き物を飼いはじめましてね。それの成長が楽しみなんですよ」とのこと。
・(以下は図書館に失敗して雑誌を見つけた時のみの情報開示)
「紅茶やお菓子には不思議な力があると私は思っていましてね、疲れているときや、気が動転した時に飲むとなんだかホッと一息つけて、一気に冷静になれるんですよ。」という高橋教授のインタビューが心に残った。
◯水槽
大きな水槽が2つ。成人1人分だったら余裕で入れそうな大きさ。一個は割れており、水浸しで中には何もはいっていない。
割れてない方の水槽は時間経過で以下のように水槽の中身が変化していきます。
玉虫色の生き物が水槽にみっちり→小指の先くらいの豆粒→こぶし大の何か→胎児→幼稚園児→小学生→中学生→現在
しばらく見ていると少しずつこの生き物が大きくなっていることに気づきます。
あんまりにも水槽の中身を見ないようだったら無理やり見させて成長していることに気づかせましょう。
「こぶし大の何か」のときにアイディアを振らせて、成功するとそれが「人間の赤ちゃん」であることに気づきます。
適宜SANチェックを入れると緊張感が出て良いと思います。
生物学:今まででこのような生き物は見たことがない。「この水槽はこの生き物を養殖する培養装置なのでは?」と思いつく。
脳筋がいる場合ですが、この水槽は壊せます。耐久は12です。
ですがその場合、戦闘が発生します。その場合、全員ロスト処理です。
ショゴスの改造生物ですが、ステータスはショゴス準拠です。
◯机
机の上にはメモやら本やらが乱雑に積まれている。筆記用具がペン立てに刺さっている。どうやら凝り性だったらしく、現代にしては珍しく、万年筆とインク壺がある。黒、赤、紺色のインク壺だ。机の引き出しがあいており、いかにも怪しい。
◯机の引き出し
高橋京介の日記が出てくる。
気になるところを抜粋。
◯月X日
凄い生物をもらった!こいつは人間の姿になり変わることができるらしい。
見た目は気持ち悪いが、それはまあご愛嬌、だ。
◯月X日
早速自分を作ってみた。研究者たるもの、まずは自分で実験だ。
何回か失敗した。結構難しいな。これ。しかし難しいからこそ燃えるものだ。
◯月X日
なかなか実験はうまくいかない。
まさかとは思うが、元となる人間によって変わってくるのだろうか?
だが都合よくそんな生贄は手に入らないし…。研究者に悩みは尽きない。
◯月X日
友人のXXと久しぶりにあった。こいつは俺にこの不思議な愛らしい生物の情報をくれた唯一の信頼できる人物だ。
唯一の欠点は整いすぎている顔立ちだな。会うたびに本当に腹が立つ。
しかし、この愛すべき友人はまたもや俺に有益な情報を教えてくれた。…遠くにいる人間を呼び出し、そしてその場に縛り付けておく呪文だ。
なるほど、これがあれば人間を拉致するのも簡単そうだ。
召喚時に魔法陣の作成と呪文の詠唱が必要になる。魔法陣の模様はとても繊細で難しい。
しかし結構なスペースを必要とするなあ。
なんでこんなので魔法みたいなことができるんだろうか。文句を言いつつも完成させる。
◯月X日
実験のために俺とは全く関わりのない人たちを選定した。
絶対に足の付かない魔術と、俺と全くの関係のない人間。
こいつらなら行方不明になっても俺が疑われることはないだろう。多分。
◯月X日
この生き物が人間たちに成り代わったら、をシミュレーションしてみた。
最初はやはり違和感を覚えるみたいだが、自然に周りも慣れるらしい。
この生き物は学習能力が凄いようだ。しばらくすると成り代わり前の記憶を少しずつ思い出し、
最終的には違和感なく周囲に溶け込む。すごいぞ!
◯月X日
召喚は成功した。とりあえず寝かせておく。強めの睡眠薬だししばらくは起きないだろう。
生き物が俺とそっくりになったと思ったら
こいつを入れていたガラスを急に割って俺とそっくりのこれが外にでてきた!こんなに力が強いのか?
しまった、水槽が壊れたから(文字が汚くて読みづらくてよくわからない)
最後の文字については日本語-20で読み取れる。文字が汚くて読み取れないところの文章は以下の通り。
(生き物の成長を止める解除コードがきかない。ていうか携帯何処置いたっけ)
◯机の上のメモ
普通に見ても「情報工学や数学の難しいメモ書きばっかりでよくわからない」だけですが、事前に本棚から2進数/16進数についての情報を開示している場合にはきっと目に付くでしょう。
目星、もしくは「16進数に関連した情報はないか!」と指定し、机の上を探すことで情報開示
画像参照。16進数を10進数に変換する方法についての高橋教授のメモ書き。(救済措置用)
KP向け解き方解説
9→9×16×16
C→12×16
F→15×1
全部足すと2511になる。
スマホは持っていること、またパソコンには電卓機能がついているので、電卓機能の使用はOK.変換ツールの使用は当然ながら不可。
部屋の隅から隅まで探索してくれた探索者が居た場合
カーペットの裏、本棚を動かす、他、部屋の隅から隅まで探索をするようにしてくれた探索者、もしくはKPが驚くような提案が出来た探索者はKPの裁量次第で以下の情報が書かれたメモ切れを出しても良い。クトゥルフ神話技能3%取得。
『ショゴスは水陸両生である。次第に知性を持つようになり、反抗的になり、主人を模倣するようになった。そして、自分たちを想像した主人である古のものに抵抗して滅ぼしてしまった。彼らは主人と意思疎通を行うにあたっては主人が望むいかなる方法を取ることもできる。その方法に必要な身体の器官を自由に生成することができるからである。』
□最初の部屋
隣の部屋のヒントを取得後、最初の部屋に戻って情報が出てくる部分についてです。
◯パソコンの中について
隣の部屋にある、高橋の遺体の手の甲にかかれているパスワードを入力するとロックが解除される。パソコンの中を見ると、開きかけのフォルダが目に入る。
現在開いているフォルダは「探索者名1.wmv」「探索者名2.wmv」「探索者名3.wmv」と書かれている。
以下、動画の内容。
そこにはXX(探索者の名前)が自分の部屋で虚ろな顔をして座っているところが写っていました。
いえ、本人には分かるでしょう。それはXXではなく、「自分の顔によく似た何か」なのだと。
しばらく見ていると、自分と同じ顔をしたそれは
服を着ずに外へ出ようとしたり、何かわからないことを言われると「テケリ・リ」と言い出したり、当然仕事もまともにできなかったり…。
周りも貴方とそっくりな「それ」に不信感を抱いているようですが、しばらくすると「それ」は貴方の元いた場所に順応していきます。
周りもいつの間にか「あの頃はあいつも色々忙しかったしな。疲れてたんだろう」と違和感なく「それ」を受け入れ始めます。
…貴方が元いた場所は、もうなくなりました。
貴方が元いた場所にはすでに貴方と同じ顔をした「それ」が我が物顔で居座っています。
貴方が今まで築いてきた人間関係も、地位も名誉も、大事な友人も、全て貴方のものではないのです。
突然、画面は砂嵐に切り替わります。
ざ、ざざざー…という砂嵐特有の雑音が部屋中に鳴り渡り、そして…。
『「あいつ」が偽物だって、どうして誰も気づかないんだろう』
そのような字幕が現れ、動画はぶつっと切れ、終了しました。
◯強制アイディアロール
成功の場合、水槽の中の「何か」が成長しきったら、この動画と同じことが起こるのでは…?と思い強い恐怖を感じます。SANチェック1/1d6
※先に解除コードを入力していたら、この未来は訪れないとわかっているのでSANチェックは無しです。
※この動画はあの水槽の生物が自分と成り代わったら、という未来をシミュレーションした動画です。高橋の日記に書かれていた「この生き物が人間たちに成り代わったら、をシミュレーションしてみた。」のことです。
◯パソコンの救済措置
「コンピュータ技能」:16進数・2進数を10進数に変換できるページが見つかる。変換後の数字を開示。
きちんとした宣言(2進数・16進数についての情報、もしくは変換できる機能を探します!など)があれば「図書館」技能で振らせても良いでしょう。
◯携帯電話
帰宅フラグ1です。
間違えた番号にかけた場合「解除コード番号が違います。残り回数は2回です。」とアナウンスされる。
2進数・16進数を解読後、「022-2511-4514#」に電話をかけると「永久的に彼らの成長を止めます。よろしければ1を、キャンセルする場合は2を、もう一度聞く場合は3を押してください」とアナウンスされます。
1を押すと「彼らの成長は永久に止まりました。ご利用いただきありがとうございます。」とアナウンスが流れ、ぶつっと電話が切れます。
水槽のある部屋から「ピーーーーーーーーーー」と高音が聞こえます。これは水槽の装置が止まった音です。
3回間違えた場合は時間を進めてエンディング1処理です。
◯テーブルクロスの下
机の上に精巧な魔法陣が描かれている。ほのかに青く発光している。
※帰宅フラグ2です。探索者たちを召喚し、この場に縛り付けている魔法陣を無効にすることで帰れる。
・テーブルクロスに隣の部屋の水槽の水を含ませ、インクを拭き取る
・隣の部屋にあるインク壺の中身をぶちまける
・紅茶をぶっかけてインクを浮かす
など。プレイヤーによっては自分を傷つけ、インクの代わりに自分の血を垂らす人もいるかもしれません。
プレイヤーが魔法陣を触ると、触った所から青い光が消えていきます。
青い光が消えるのと比例するように自分の体が消えていきます。
(例:指でこすってみる→眉毛が消えました。前髪が消えました。
4分の1くらい消してみる→片足消えました)
※自分の体が消えていることに気づいた探索者たちは慌てふためきます。このシナリオで一番KPがニヤニヤできるところです。喜々として探索者たちの身体を消していきましょう。
どうしてもPLたちがこの魔方陣の処理を思い浮かばなければ
アイディアロールで高橋の日記を思い出してもいいでしょう。
『遠くにいる人間を呼び出し、そしてその場に縛り付けておく呪文だ。召喚時に魔法陣の作成と呪文の詠唱が必要になる』
◯エンディング処理
3つに分岐します。
1.解除コードの解読が出来ず、魔法陣にも気づかず、生き物が成長しきってしまった。
隣の部屋からパリン、という音。そして、「テケリ・リ」「テケリ・リ」「テケリ・リ」という泣き声が聞こえてくるだろう。
ガチャリ、とドアが開く。そこには…
自分たちと同じ顔の人間が立っていた。
目は何処かうつろで、光がなく、玉虫色の液体でぬれている。
「同じ人は」
「ふたりも」
「テケリ・リ」
「いらない」
そう言うと、ものすごい力で貴方の身体を捻じ曲げてしまいました。
ごきごきごきごきごきごきごき…、ぼきりっ、という音が部屋中に響き渡り。
貴方が最期に見たものは、自分と同じ顔が心底楽しそうに笑っているところでした。
2.魔法陣を無効にできたが、解除コードが分からず、そのまま帰宅した場合
あなたたちは意識を失ったと思われる場所でうずくまっていました。
「あれ?ここは?」
どうやら、意識を失ったと思われる時間からそれほど時間は経っていないようです。
なんだか嫌な夢を見た気がする…そう思って探索者たちは家路へ急ぎます。
自宅で一人、くつろいでいると突然「ピンポーン」とチャイムの音がなりました。
宅配便かな?と思ってドアを開けると、そこには、自分たちと同じ顔の人間が立っていた。
目は何処かうつろで、光がなく、その身体は玉虫色の液体でぬれている。
「テケリ・リ」
※ロスト処理にするか、うまく生き残れたかはKPとの相談で決めてください。
※ショゴスから常に逃げ続ける探索者にするのも面白いかもしれません。
3.解除コードを入力し、魔法陣を無効にした場合
あなたたちは意識を失ったと思われる場所でうずくまっていました。
「あれ?ここは?」
どうやらそれほど時間は経っていないようです。
ただ、はっきりとあの密室で起こったことは覚えていました。
数日後、探索者たちはそれぞれ、テレビやラジオに紅茶王子こと、高橋教授が出演しているのを見かけます。
レポーターのきれいな女性が高橋教授に対して質問をしています。
「高橋教授は紅茶がお好きなんですよね!おすすめはなんですか?」
「おすすめ?テケリ・リ…?」
高橋教授は、はじめて聞いた単語だ、とでも言うように首をひねってそう言います。
その日はTwitterや各種メディアが大盛り上がりでした。
しかしメディアで取り上げられた高橋教授の奇行も、時が経つにつれて忘れられてしまうでしょう。
高橋教授の研究どおり、しばらくすると成り代わり前の記憶を少しずつ思い出したのか、以前のように「おちゃめで紅茶やお茶菓子に造形の深い大学教授」として彼は今後も活躍していきます。
皮肉なことに、自身の研究の成功を彼は自分の命をもって証明したのでした。
その証明は、探索者達以外誰も、永遠に知ることはないでしょう。
…あの経験をした探索者たち以外はきっと気づくことはないでしょう。
『「高橋教授」が偽物だって、
どうして誰も気づかないんだろう』
シナリオクリア報酬 1d6
(2017.11.06追加)
※KP向け情報1:途中の計算をきちんと行った探索者にはコンピュータ技能成長のチャンスを与えても良い。
※KP向け情報2:明らかなツール使用者(途中の計算を全く言えない)もしくは、魔法陣を消す時に怯えてしまい少しずつ消す選択をした場合は、下記の結末を与えても良い。(END4)
目の前で他の探索者が消えるのを見た。
もちろん自分も元の世界へ帰れるのだろう。
しかし、いつまで経っても元の世界へ戻れる気配はない。
生首だけが冷たい床の上に転がる。
「助けてくれー!」叫んでもあなたの声は誰にも届かない。
もう無いはずの背中に冷たいものが走った気がした。
『机の上の魔法陣、全部消せなかったのではないか?』
高い机の上には生首だけでは登れない。つまり…ここから出る選択肢は無い。
あなたはその生命活動を停止するまで、この白い密室に取り残されるのでした。
※首のないデュラハン探索者にするか、餓死によるロストかはKPとの相談次第。
別名:ゆっくりまんじゅうエンド
◯高橋京介
医学と情報科学の2つで博士号を習得した変態という名の紳士。43歳。
ある日「ショゴス」を友人からもらい、その特性から「人間のクローンを作れば大儲けじゃね」と思いつく。
まずは自分のクローンを作って研究を進めようとしていた所、完成したショゴスが水槽を割ってでてきたことに驚き、脚の小指を本棚にぶつけて気絶。その後、生まれたてのショゴス(生まれたてなので善悪の概念が無く、持っている力のままに人間をおもちゃにして遊ぶ)に腹を潰されたり、首を180度曲げられたりと悲惨な人。
まったく無関係な探索者達を拉致し、このような強行に至った。
紅茶とお茶菓子をこよなく愛する、愛され系男性教授として新聞やラジオに引っ張りだこだった。
あだ名は「紅茶王子」
◯あとがき
読んでも読まなくてもどっちでもいいやつです。
自分がエンジニアで、「コンピュータ技能」使うところがなくて悲しいので作りました。
元々、『自分とそっくりの生き物が成り代わった後、普通に生活して自分の居場所を奪われた様を大画面で見せつけられたら嫌だな』と思ったところから始まったシナリオです。
パソコンとかネットワーク入門とかでまず真っ先に2進数とか16進数の計算があって、そこで躓いた友人をたくさん見てきました。「こんなんいつどこで何に使うんだよ!」と思いつつ学生時代は私も泣きながら勉強していました。
そんな「いつ役に立つんだろう…」を「今役立てよう」と思って、2進数、16進数変換のギミックをシナリオの中に入れました。
テストシナリオを回した時に「学校の授業で習ったことがCoCで役に立つとは…」と驚かれたりしたので、シナリオを作ってよかったです。
テストプレイをした時の名前は「足の小指をぶつけてしまってな(仮)」でした。(なので高橋の死体にはその名残として足の小指をぶつけたあとがある。)
テストプレイを無事にクリアした後、探索者の一人が成り代わられた高橋を見て「なんで誰も気づかないんや…」と呟いたのがきっかけで、「どうして誰も気づかないんだろう」という名前になりました。People in the boxのニムロッドで「どうして誰も気づかないんだろう」という歌詞に影響を受けました。あんな感じでみんな叫んでください。
「(高橋が偽物だって)どうして誰も気づかないんだろう」
別のキャンペーンにつなげることもできるようにシナリオ内では明記されていない謎を残しています。
- 高橋教授にショゴスをあげた謎の「友人」とは?そいつを倒さない限り、同じようなことが起こるのではないか?
- ニャルラトホテプとは明言はしておりませんので、イケメンのショゴストゥシャでも黒幕設定をご自由にお考えいただけます。
- 高橋教授の研究ではショゴスの改造生物を「そのうち本人の記憶を取り戻し、成り代わる」としていたが、本当にそうなのだろうか?ショゴスという神話生物の特性上、彼が自分の主人を殺したのと同じように、成り代わった後の周りの人を殺していく大量殺人事件につながるのではないか?
- ビデオ内の『「あいつ」が偽物だって、どうして誰も気づかないんだろう』という編集をしたのは誰なのか?